自転車道の外観と道路標識~「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」についてよくあるご質問と回答から

昨年の11月29日、国土交通省は「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」というのを公表したのですが、これに関し先般、「よくあるご質問と回答 」というFAQ集のようなものをウェブ上に掲載しました。

>> 「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」についてよくあるご質問と回答

ここに取り上げられている事項の大半は道路整備に関することなので、主に道路交通法を扱うJABLawとしてはちょっと専門外であるのですが、中に1項目だけ道路交通法がからむ事項があり、しかもそれが「その説明は甚だしい誤解を招くんじゃないか」と懸念されるものでありましたため、ご紹介かたがた、自転車道に関する誤解されがちなポイントを書いて参りたいと思います。

----------(ここから引用)----------

Q.自転車道を示す道路標識(325の2)は、道路管理者でも公安委員会でも設置が可能となっているが、設置者によってその効力に差はあるのか?

A,自転車道は、道路標識の設置の有無に関わらず、縁石等により構造的に車道及び歩道を分離し整備することにより、道路交通法による普通自転車の通行義務が発生します。道路標識(325の2)は、道路管理者、公安委員会のいずれが設置しても、普通自転車の自転車道の通行義務は適用されます。

----------(引用ここまで)----------


まず、回答の前半の「自転車道は、道路標識の設置の有無に関わらず、縁石等により構造的に車道及び歩道を分離し整備することにより、道路交通法による普通自転車の通行義務が発生します。」についてですが、これは、国土交通省による回答らしい不正確な回答と言えるでしょう。

自転車道は、(道路交通法の定める)外観上の要件を満たしていれば、『道路標識の有無に関わらず』『普通自転車の通行義務が発生』します。
回答のこの部分は、確かに正しいです。
しかし、肝心の外観上の要件が、国土交通省の説明では不正確です。
道路交通法における、自転車道たる外観上の要件は、この回答で用いられている言葉を借りて説明すれば・・・

 「縁石等により構造的に『車道』を分離し整備」されたもの

・・・になります。
歩道を分離して整備した通路は、道路交通法上は自転車道ではないので、回答前半は半分誤っているということになります。

ちなみに、上で「国土交通省による回答らしい」と書きましたのは、この回答による外観の説明が、国土交通省が管轄する法令である道路構造令(道路法令の一つ)による定義だからです。
何しろ、国土交通省が発している自転車道(それ以外の自転車に関する事項もそうですが・・・)関連情報の多くが、道路法令と道路交通法令における自転車道の定義の違いを十分認識せぬままに発せられているとしか思えないものばかりですので。


次に、回答の後段の「道路標識は、道路管理者、公安委員会のいずれが設置しても、普通自転車の自転車道の通行義務は適用されます。」についてですが、これは、回答の前半における正しい部分と真っ向対立しかねない、かなり珍妙な回答と言えるでしょう。

自転車道(らしき通路)において、自転車*の通行義務が生じるかどうかは、回答前段にあったように、『道路標識の有無に関わらず』ということになります。
公安委員会が設置しようが、道路管理者が設置しようが、自転車道の道路標識そのものには何の効力もないのです。
そのため、外観が道路交通法上の自転車道に該当する通路であれば、標識がなくとも自転車通行義務が生じるのです。
また逆に、外観が道路交通法上の自転車道に該当しない通路であれば、標識があっても自転車通行義務は生じないのです。
標識があれば必ず自転車通行義務が生じるかのような印象を与えるこの部分、著しく不適切な回答と言っても過言ではないでしょう。


ここでご紹介した次の2つの誤り、おそらく多くの方も誤解されているのではないかと思いますので、誤った情報に惑わされないよう、ご注意いただければと思います。

×歩道を区画したものも自転車道であり自転車通行義務がある
 →歩道を区画した自転車道は道路交通法上の自転車道ではなく通行義務もない

×自転車道の道路標識があれば必ず自転車通行義務が生じる
 →いくら道路標識があっても道路交通法上の自転車道でなければ通行義務は生じない


なお、同じ国土交通省でも、道路交通法上の自転車道に関する適切な解説を載せている資料も作っております。
国道交通省による自転車道の説明がすべて誤っているわけではないということで、ご紹介致しておきます。

(国土交通省による自転車道に関する適切な解説の(数少ない)事例)
>> 自転車等に関する法令等の規定

関連記事


そこは(道路交通法上の)自転車道じゃないかもしれない
自転車道は通らなくても良い
これは本物の自転車道かもしれない!@ひたちなか市の自転車道



* 自転車
普通自転車を指し、以後同様としてます。

東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例案「原案可決」

本日の東京都議会で、一時期ちょこっとだけ話題になった「東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例案」が、原案のとおり可決したそうです。

>> 平成25年第1回東京都議会定例会 提出議案と議決結果
(第29号議案)

ところでですがこの条例、その中身は、以前の記事にも書きましたとおり、肝心な事項はほぼすべて規則に丸投げしちゃっているという、何とも不明瞭なものになっております。
そのため、条例が可決されたに過ぎない現段階では、今後具体的に何がどうなってしまうのかについては、まだ何も分からない状況にあると言っても、過言ではないでしょう。
マスコミ報道で取り上げられた「ブレーキ無しピスト販売禁止」に関する第23条(違法な利用となる自転車の販売等の禁止)ですら、販売禁止となる対象や適用される状況などといった細部事項は、おそらく第40条(委任規定)によって規則に定められることとなるでしょうから、これとてどうなるか現段階では何とも言えません。
(まぁ、ブレーキ無し自転車はほぼ確実に販売禁止対象となるでしょうが、しかし何をもって「違反することとなることを知って」と言えるかは規則が定められた後でないと分からないので、現時点ではブレーキ無し自転車の販売が一切禁止とは断言できません。)

この、条例による丸投げ・・・もとい、委任を受けて規則で定められることとされている事項は、販売禁止規定以外にも先述のとおり多岐に及び、自転車利用者に影響しそうなものとしては、次のようなものが挙げられます。

・基準適合自転車(第17条)
 自転車利用者は、規則で定める安全基準に適合した「基準適合自転車」を利用するよう努めなければならない。

・自転車点検整備指針(第21条)
 自転車利用者は、都が作成する自転車点検整備指針を踏まえ点検整備を行うよう努めなければならない。

・駐車場所の確保状況の確認要領(第30条)
 自転車通勤者がいる職場では、規則で定める要領で、駐車場所(駐輪場等)が確保されていることを確認しなければならない。

規則において、こういった事項がどのように定められるかが、今後の東京都における自転車の利用のしやすさ/しにくさに大きく影響することでしょう。
そのため、今般の条例案可決については、一喜または一憂するにとどまることなく、今後制定されるであろう規則の策定状況をしっかり監視していくことが、今後の東京都(ひょっとしたら全国も?)における自転車利用環境にとって大事なこととなるものと思料致しております。



ちなみにですが、実はこの条例に関し、現段階でもはっきりと言えることがあります。
それは、これも以前の記事に書いたことなのですが、都が整備すべき自転車通行環境には「自転車道の整備等に関する法律上の自転車道」すなわち自転車通行可の歩道も含まれているということでございます。
・・・これ、言い換えれば、東京都はきちんと自転車通行環境を整備する気がないってことになるでしょう(笑)。

東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例案

昨今話題の「東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」、その案・・・今度はちゃんと明文化されたもの・・・がついに姿を現しました。

>> 東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例案 (PDF)

早速ざっと目を通してみましたので、ちょっと気になった点などを今回の記事では書き留めて参りたいと思います。

(関連記事)
『その利用が道路交通法等に違反する』自転車
『自転車関連事業の任意の登録制度』
謎だらけの駐輪場所確保・確認義務


■第2条(定義)

第1号 自転車

自転車の定義には、普通自転車ではない自転車も含まれていますが・・・そこまで広げていいの?(笑)

第2号 自転車道

自転車道の定義を、道路交通法のものではなく、なぜか「自転車道の整備等に関する法律」のものとして定義しております。
そのため、この条例でいうところの自転車道には、「自転車通行可の歩道」(道路交通法上は単なる歩道)もがっつり含まれることとなります。
なおこの定義は、後でご紹介する第24条に関係してきます。
(参照)自転車道の整備等に関する法律第2条第3項第2号

■第5条(自転車利用者の責務)第2項

多くの方が指摘している部分のようですが、「自転車利用者は、都が実施する自転車安全利用促進施策に協力」せよと、いきなりそんなこと言われても、ねぇ(笑)。

■第10条(自転車安全利用指針)

何でも、東京都が、自転車の安全で適正な利用に必要となる技能・知識に関する事項を指針として作成することとなるらしいです。
果たしてどんなのが出てくるか、ちょっと楽しみです(笑)。

■第14条(事業者による自転車の安全で適正な利用に係る研修の実施等)

事業者は、自転車通勤者に対し、安全教育を行うように努めなさいというもののようですが、その際には、弊JABLawをご活用ください♪

■第17条(安全な自転車の利用)第1項
■第20条(自転車点検整備指針)

何でも、東京都は、別に規則で「自転車の安全性に関する基準」やら「自転車点検整備指針」やらを定めるらしいです。
これらも、果たしてどんなのが出てくるか、ちょっと楽しみです(笑)。

■第22条(自転車整備業者による点検整備)

・・・で、自転車屋さんは、この都が定めた自転車点検整備指針を踏まえて点検整備を行うように努めなければならなくなります。
大変なことにならないといいですね。。

■第23条(違法な利用となる自転車の販売等の禁止)

マスコミネタになった部分ですが、「違反することとなることを知って自転車を販売してはならない」という表現から、まぁ自転車屋さん側の確認義務のハードルは低いと考えて良さそうですね。
なお、ベル無し自転車が「安全性に関する法令の規定に違反」するかどうかは・・・どうなんでしょうねぇ、個人的感覚ではベル無し自転車はこれに引っかからないと思いますが。。

■第24条(自転車道の整備等)

第2条第2号で定義された「自転車道」には、「自転車通行可の歩道」も含まれますので、これに関して言えば、何ともハードルの低い規定ですね(笑)。

■第30条(通勤に利用する自転車の駐車場所の確保又は確認)

これも話題になった、通勤自転車の駐輪場所確保確認義務なのですが、どのように確保・確認するかについては、別途規則で定めるとのことで、今のところ不明です。。

■第31〜36条(登録関連)

想像通りの登録制度でした(笑)。
で、その基準は、やはり別途規則で定めるということで、果たしてどんなのが出てくるか、ちょっと楽しみです(笑)。

自転車安全ルート推奨マップ多摩中央署版 実走映像本編

先日の記事で、先に番外編をご紹介してしまった自転車安全ルート推奨マップ 多摩中央署版ですが、本来の(?)『通常ルート』と『推奨ルート』の映像もご用意致しましたので、以下にご紹介いたします。

(振動等により画質が著しく悪くなる箇所がございます。ご了承ください。)

■通常ルート編


■推奨ルート編


いずれも、ひたすら公園内の遊歩道とか団地内の通路を通るルートで、推奨ルートはもとより、通常ルートも公道部分をほとんど通っておらず、特に通常ルートについては通学自転車を1台も見かけなかったこともあいまって「本当にこれが『通常ルート』なのか?」という疑問を持ったのですが、まぁ、とにかく、こんな感じでございます。

あと、通常ルート・推奨ルート共通して通る部分、スタート地点から最初に公道(の歩道)に出るまでの公園内通過ルートが、歩行者・自転車にけっこう気を遣う部分に感じましたので、「安全ルート」を設定するのであれば、この部分の別ルートを検討すべきなんじゃないかなぁと思いました。
・・・そういう観点では、先日の記事の『公道ルート』が安全ルートとして推奨すべきものとも言えそうですが(笑)、まぁ警視庁にはこういうルート設定は無理ですかね。

ちなみに、それぞれのルートの距離と時間は、次のとおりでした。

■通常ルート
 ・距離 1.9km
 ・時間 8′40″

■推奨ルート
 ・距離 1.9km
 ・時間 8′20″

通常ルートの時間は、二段階右折に要した時間なんかも含まれているので、信号が全く無い推奨ルートの方が時間的に有利なようですね。
公道ルートですと、さらに距離にして200m、時間にして2分以上短縮できるのですが。

関連記事


自転車安全ルート推奨マップ - 多摩中央署・共通ルート編 -
自転車安全ルート推奨マップ - 多摩中央署・通常ルート編 -
自転車安全ルート推奨マップ - 多摩中央署・推奨ルート編 -

自転車安全ルート推奨マップ多摩中央署版 実走映像番外編

昨日、第4期ちゃりマップの対象とした自転車安全ルート推奨マップの最後の実走調査として、多摩中央警察署が作成した自転車安全ルート推奨マップのルート(+α)を実走して参りました。

・・・で、『通常ルート』も『推奨ルート』もすっ飛ばして「番外編」というのも何ですが、多摩中央署が示した両ルートとは異なるルートについても実走&撮影をしてきましたので、まずはその様子をご紹介致したいと思います。

以前に弊記事でご紹介しましたとおり、このマップに示されているルートは、通常ルートも、推奨ルートも、いずれも公園などの中ばかり通り、公道はほとんど通らないようなルートになってました。

>> 通常ルート・推奨ルートの共通部分に関する記事
>> 通常ルートに関する記事
>> 推奨ルートに関する記事

そのようなわけで、主に公道を通るようなルートの場合、果たしてどうなのかというのが気になり、そのようなルートを設定の上、実走してみました次第です。
なお、公道ルートは、過去の記事でご紹介したルートを採用してみました。

以下、その映像をご紹介致します。
(振動等により画質が著しく悪くなる箇所がございます。ご了承ください。)



■所要時間等
 ・距離 1.7km
 ・時間 7′10″


多摩警察署のマップも、先にご紹介した2つのマップと同様、駅近くの駐輪場〜学校というルートになってますもので、通学時間帯に当たるであろう午前7時52分から撮影を始めたのですが、道路上は思いのほか自動車が少なく、大変快適にかつ安全に通ることができました。

ちなみに、撮影中に学生の通学風景も目にしたのですが、推奨ルートはもとより、通常ルートを通る学生も皆無であり、大半の学生は、この公道を通るルート(の歩道上)を通っていたように感じました。
・・・いやはや、こうなると、この『通常ルート』って一体何なの?って大いなる疑問が湧いて参りますね(笑)。

<< | 2/13PAGES | >>

CALENDAR

   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< August 2018 >>

SELECTED ENTRIES

LATEST ENTRIES

CATEGORIES

ARCHIVES

PROFILE

RECENT COMMENTS


公益社団法人自転車道路交通法研究会 [JABLaw]

  • 公益社団法人自転車道路交通法研究会

JABLaw運営サイト

法務専門部会運営サイト

その他の関連サイト