[自転車横断帯No.03] 『付近』か否か、自己判断のポイント2点

一つ前の記事で、自転車横断帯が道路交通法第63条の7第1項で言うところの「交差点の『付近』」にあるか否か・・・砕いて申せば自転車横断帯を通るべきか否か・・・の判断は、自転車の運転者が自ら判断するものである旨を書きました。

これを実際の通行に即して申せば・・・、

1.自転車を運転して車道を通行している。
2.前方に交差点が見えてきた。(そしてその交差点を直進したい。)
3.交差点の辺りに自転車横断帯を発見した。
4.その自転車横断帯の設置位置は、直進しようとしている交差点の『付近』か!?を自己判断する。

   ↓
(自己判断の結果)
A.『付近』と判断した。
 →自転車横断帯を通行する。
B.『付近ではない』と判断した。
 →自転車横断帯を通らずそのまま直進する。
C.判断がつかなかった・・・。
 →そのまま直進しないと危ない(ので自転車横断帯を通らずそのまま直進する)。

・・・ということとなります。

何しろ、このシリーズで取り上げている道路交通法第63条の7第1項には、自転車横断帯がどのような位置にある場合に自転車に対する通行義務が生じるかについて、何ら具体的に書かれておりませんので、自転車運転者がどうしても自己判断しなければならないのです。
道路交通法令の他の条文・・・例えば合図(手信号)に関する条文では、『3秒前[*1]』『30メートル手前[*2]』などと具体的に規定されているのに、こと自転車横断帯についてはそのような具体的記述が一切ない、このことからも、自己判断に委ねられていることが明らかでございます。

しかし、では自転車利用者が各自勝手に判断して構わないかと問われれば、そうではありません。
自己判断を行うに際しては、道路交通法令、その他道路を通行するに際し社会通念上果たすべき注意義務を考慮した上でなければなりません。
もし、道路交通法令や自転車運転者が果たすべき注意義務などを考慮せずに、自転車横断帯通行義務の有無について誤った判断をしてしまい、そのことが原因で交通事故等が発生すれば、民事上の相応の責任を負うこととなります。
不適切な「自己判断」は、民事責任[*3]の原因となり得るのです。

注!
この先の内容につきましては、現在は異なる解釈を採用致しております。
記事執筆者が当時このような考えにあったということでお読み頂ければと存じます。

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では、交差点に接近中に自転車横断帯を目にしたならば、いかなる点に着目して、その自転車横断帯が法第63条の7第1項で言うところの『付近』に該当するか否かを判断すれば良いか。
道路交通法令等の目的や法令に定められている自転車の通行方法を考慮すれば、様々な条件が考えられます。
しかし、自転車の運転中にそれほどたくさんの条件判断を行うのは現実的ではないでしょう。
また、自転車運転者が目にする光景を元にした条件でなければ、判断条件として掲げても自転車利用者にとっては何の役にも立たないでしょう。
そこで、車道を通行する自転車利用者の立場に立って、自転車横断帯を目にしたときに、それが法第63条の7第1項による通行義務を課すものであるかの条件を、次のわずか2点に絞ってみました。

(1) 自転車横断帯の道路標示を交差点の30mを越えて手前において明確に視認できるか否か
(2) その自転車横断帯の始点に現在の通行位置から安全かつ円滑に進入できると即座に判断できるか否か

少なくとも、この2つを満たすような位置に自転車横断帯が設けられていれば、その自転車横断帯は、法第63条の7第1項で言うところの『付近』に設置されているとみなし得る[*4]こととなります。
ですので、2つの条件いずれについても自信を持ってYES!と言い切れるのであれば、その自転車横断帯を通行されることをお勧めします。

しかし、これらの条件のどちらか片方でも満たされない場合に、自転車横断帯を通れば、その自転車運転者は必ず何らかの道路交通法違反行為を犯してしまいます。
上に掲げた2条件は、「自転車横断帯を通っても法令違反にならないかどうか」の条件でもあるのです。
ですので、上で「自信を持ってYES!と言い切れるのであれば」とさらなる条件付けを致しましたが、逆に一つでも自信を持ってYES!と言い切れない条件があれば、他の道路交通法違反行為を犯す恐れが生じるため、自転車横断帯を通るべきではありません。

そして、少なくとも私がこれまで目にしてきた自転車横断帯の中で、上の2つの条件をいずれも満たしていると断言できるものは、2つしかありません。
それこそ数え切れないほど設置されている自転車横断帯の中で、わずか2つ。
「多くの自転車横断帯は車道通行自転車に対する道路交通法第63条の7第1項の通行義務の効力を有しない」というJABLaw説の理由の一つ[*5]は、ここにございます。

・・・というわけで、いよいよ(というか、ようやく)本題に入って参りました。
次回からは、これらの条件について、細かい説明を致して参りたいと思います。

【ここまでのまとめ】
自転車で車道を通行している。直進しようとしている交差点に自転車横断帯が見えた。このとき・・・、

・自転車横断帯を30mを越えて手前から明確に視認できた。
・かつ、今いる位置から自転車横断帯に安全円滑に進入できると即座に判断できた。

・・・のであれば、その自転車横断帯を通りましょう。
しかし、どちらか片方でも満たされないのであれば、そんな自転車横断帯は通らなくていいです。


--------------------
ここから先はオマケのお話。

冒頭の方で、自転車横断帯の設置位置が『付近』か否かは自転車運転者が自己判断する旨のことを書きましたが、これ以外にも、自転車運転者が自己判断しなければいけない事項は、けっこう存在します。

例えば車道の通行位置。
自転車は、片側一車線道路では、『道路の左側端に寄って』通行しなければなりません。
では、どの程度左側端に寄れば良いか、これは自転車運転者の自己判断に委ねられます。
私の経験から申せば、道路の左端のうち側溝の蓋など通行に適さない箇所を除いた部分の左端から、概ね1〜1.5mの範囲内を自転車のタイヤが通るようにするのが適当と考えますが、道路状況によっては、安全を確保するために、もっと道路の中央付近に寄るべき、むしろ道路の中央付近を通行すべきという状況も存在します。

道路交通法の目的は、交通の「安全」と「円滑」。
自己判断すべき通行方法については、とりあえずこの2点を念頭に判断されると良いでしょう。



*1 3秒前
進路変更の合図(手信号)は、3秒前に行います。

*2 30メートル手前
右左折の合図(手信号)は、30メートル手前で行います。

*3 民事責任
「あれ、刑事責任は?」
刑事責任は問われません。詳細は、しばらく後の記事で書こうかと思いますので、首をキリンのように長くしてお待ちください。

*4 みなし得る
実際のところ、これだけでは『付近』とは言い切れないのですが、とりあえずこの2点の条件をいずれも満たしていれば、まぁ『付近』と判断しても差し支えないレベルにはあるでしょう。

*5 理由の一つ
他にも理由はたくさんありますが・・・全てを書こうとするといつまでたっても完結しないので、最も実用的なものを取り上げることとしました。

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