マスコミのよくある中途半端な自転車ルール解説

去る10月25日に、警察庁が「良好な自転車交通秩序の実現のための総合対策の推進について」(PDF)なる通達を出してから、自転車の通行方法に関するマスコミ報道が増え[*1]、それにつれ、一般市民の間でも自転車の通行方法に対する関心が高まっている[*2]ようです。

ところで、テレビなどで自転車に関する報道が行われる際、併せて自転車の通行方法に関する解説がなされることがよくあるのですが、それらの中には、内容として誤ってはいないものの、若干ポイントをはずしたような、そんな中途半端なものが、けっこうな割合[*3]で含まれているように感じます。

そのような中途半端な情報に触れるたびに、もし報道を通じて自転車の通行方法を啓発しもって交通の安全と円滑に寄与したいという意思があるならば、もう一歩踏み込んで、核心のポイントをきちんと伝えてくれればいいのになと、そんなことを考えてしまいます。

特に気になった情報は、次のような趣旨のものです。


歩道では歩行者優先
 →歩道では「常に徐行」にまで踏み込んでほしい

単に「歩行者優先」というだけでは、では具体的にどうすれば良いのかということが伝わらないでしょう。
人によっては、「歩行者がいなければどのように通っても良いのだろう。」とばかりに、歩道を自転車で徐行とはいえないスピードで走ってしまうかもしれません。
また人によっては、「歩行者にぶつからなければそれで良いのだろう。」とばかりに、自転車で歩行者のすぐそばを速いスピードですりぬけていってしまうかもしれません。(そして、そのような光景は日常的にも見られます。)
ですので、ここはもう一歩踏み込んで、歩行者がいるときはもちろんのこと、歩行者がいないときであっても、歩道は「常に徐行」であることを強調してもらえればと思うところでございます。

なお、歩道に「普通自転車通行指定部分」が設けられていれば、近くに歩行者がいない場合に限り、その歩道を通行ている自転車には徐行義務が課せられませんが、ホンモノの(法的効力を有する)普通自転車通行指定部分は、実際のところほとんど存在しません。(それっぽいものは多いのですが、そのほとんどは法定外のものです。)
ですので、自転車で歩道を通行する際には、まずは「常に徐行」という意識を持つ必要があります。


車道は道路の左端を通行
 →あまりに端の方にまで寄る必要はないという点にまで踏み込んでほしい

単に「左端」というだけでは、自転車の車道における適切な通行位置が伝わらないでしょう。
自転車利用者の中には、本当に左端ギリギリを通ろうとする人が出てくるかもしれません。(そして、そのような位置を通行している自転車利用者は日常的にも見られます。)
また自動車ドライバーの中には、自転車が適切な位置を通行しているにも関わらず、自転車の通行位置が左端ギリギリでないことのみをもって、敵対視にも似た感情をその自転車利用者に対し抱く人が現れるかもしれません。(そして、そのような感情に基づくものであろう自動車ドライバーの行為も散見されます。)
ですので、ここは一歩踏み込んで、法律の規定はあくまで「左側端に寄って[*4]」という程度であり、あまり左端ギリギリを通る必要はない、ましてや通行に不適当な部分(側溝の蓋の上など)を通る必要はさらさらない旨を補足してもらえればと思うところでございます。

なお、片側一車線かつ狭い道路では、自動車などに追い付かれた自転車は、「『できる限り』左側端に寄って」という位置を通らなければなりませんが、この場合ですら、あまり左端ギリギリまで無理して寄る必要はありません。
安全かつ円滑に通行できる範囲で左端に寄れば、それでOKです。


前後輪の両方にブレーキが必要
 →ブレーキに求められる性能と整備の必要性にまで踏み込んでほしい

単に「ブレーキが必要」というだけでは、どの程度のブレーキ性能が必要かは伝わらないでしょう。
自転車利用者の中には、自転車を買ってから長年にわたり一度もブレーキシューを交換をしたことがなく、ブレーキ性能がかなり劣化した状態の自転車に乗っている人がいるかもしれません。(そして、そのように思われる自転車は日常的にも見られます。)
また自転車利用者の中には、自転車を買ってから長年にわたり一度もブレーキワイヤーを交換したことがなく、求められるブレーキ性能を発揮しようとすればワイヤーが断裂してしまうような自転車に乗っている人がいるかもしれません。(そして、そのように思われる自転車も、日常的に見られます。)
ですので、ここは一歩踏み込んで、ブレーキ性能が法の基準に満たないものはノーブレーキピストと同様違法であること、整備を怠っている自転車のブレーキ性能の劣化具合、またその危険性などについても言及してもらえればなと思うところでございます。

なお、ブレーキシューとブレーキワイヤーの交換は、両方の作業をお店に頼んだ場合、部品代を含めても数千円程度[*5]のようです。
タイヤがパンクしたときだけでなく、たまにはブレーキなど自転車の各所を点検をして、劣化した部分があれば整備をされるのが、安全確保には欠かせないでしょう。



*1 自転車の通行方法に関するマスコミ報道が増え
件の通達が発せられる以前にも、自転車に関する報道はいろいろとございましたが、それらはどちらかというと自転車の禁止行為に目が向けられていて、通行方法にはあまり触れられていなかったような気がします。

*2 自転車の通行方法に対する関心が高まっている
そのほとんどが「車道通行がどうの」といった話に終始していて、肝心な自転車本来の通行方法にまで関心が及んでいないようではございますが・・・ただ「自転車は車道が原則」ということが一般市民に広まるだけでも一歩前進かなと思います。

*3 けっこうな割合
なかには、核心の部分に触れているような報道もございますが・・・そういった報道においてさえ、ほんの一瞬「ついでに」という程度にしか触れてくれていないのが、ちょっと残念なところです。

*4 左側端に寄って
片側一車線道路における自転車の通行位置になりますが、「左側端に寄って」とは、路肩など通行に適さない部分を除いた車道の左端に「近寄る」程度のものとなります。
道路状況にもよりましょうが、車道の左端およそ1.5m幅の部分が目安になるでしょう。
なお、道路交通法には別に「できる限り左側端に寄って」という言葉が出てくることから、単なる「左側端に寄って」は、左側にある程度の余裕がある位置を指すこととなります。

*5 部品代を含めても数千円程度
いわゆるママチャリの場合で、ロードバイクなどのスポーツタイプの自転車ですと、もうちょっとかかるようです。
でも、ロードバイクに乗ってる人は、自分で整備しちゃいますよね。

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コメント

警察にも確認したのですが、路側帯や外側線の外側は法律上車道ではないため、自転車の走る車道とはその内側になるようですね。
白線があったらその外側を走らなければならないと勘違いしている人もけっこういるのでそれも明示してほしいですね。
道は広いのに排水溝がある歩道すぐ脇のコンクリート部分をわざわざ走行してる自転車もよくみかけます

素晴らしい記事です。
たいへん感謝致します。

特に

>△車道は道路の左端を通行

については常々感じますね。
白線内を普通に自転車で走っていると、煽り運転(車間距離不保持という犯罪行為であり、非常に危険な行為です)を受けたり
万が一の安全が確保できない側方間隔1.5メートル以上あけないスレスレ追い抜きも日常茶飯事です。
マスコミの未熟な報道で犠牲になっている方々が多数おられる状況ですし
どんどんマスコミの問題報道を取り上げてくだされば、と心から思います。私もがんばります。

eugene様
佐藤様

自転車の通行位置に関することは、通行方法に関するごく基本的なことにも関わらず、十分に知られていないように感じますので、折を見て分かりやすく解説するページを作成してみたいと考えております。

24日の報道ステーションで自転車がバス専用車線を走ることが違反行為のように報じられました

私なりに調べた限りでは道路交通法におけるバス専用車線(道路左端・第一通行帯にあるもの)は個別に交通規制で自転車の走行が禁止されていない限りは走行可能であると思います

番組では路線バスの遅延の原因は違法走行する自転車のせいであるかのように受けとめられる内容でした


繭玉様
私も、他の番組でですが、同様のテレビ報道を目にしたことがございます。
「では自転車は一体どこを通れというのか」と、甚だ疑問に感じましたことです。

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