そこは(道路交通法上の)自転車道じゃないかもしれない

以前、かの「かえで通り自転車道」における自転車道の道路標識が設置されていない区間について、そこは自転車道じゃないかもしれないという考察[*1]を行ってみましたが、その頃から、では果たして、自転車道の道路標識が設置されていれば、それで「道路交通法上の自転車道」すなわち自転車通行義務が生じる通路と言えるのかという疑問を持ち続けておりました。
といいますのも、道路交通法における自転車道とは、次のように定義されているからであります。

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自転車道
自転車の通行の用に供するため縁石線又はさくその他これに類する工作物によつて区画された車道の部分をいう。
--------------------

そして、かえで通り自転車道において、自転車道の道路標識が設置されている区間を見てみますと・・・



・・・自転車道らしき部分は、元々は車道であったとはいえ、現在では明らかに歩道と一体化しております。
果たしてこれが、「車道の部分」と言えるのか、甚だ疑問です。

また、先般ちゃりマップ作成のための事前道路調査で見てきた相模原市に至っては・・・



・・・自転車道らしき部分は、明らかに歩道上に造られております。
これでは「車道の部分」などとはとても言えません。


こんなことを言っていると、「どこに造られてあっても、自転車道の標識がある以上、そこは自転車道だろう!」というツッコミが入ってきそうです。
確かに、道路標識がある以上、そこは自転車道には間違いありません。
しかし、ここで問題にしているのは、では果たしてそれは「道路交通法上の」自転車道なのか? ということであります。

・・・という感じにゴネていると、今度は「道路交通法上のものであろうがなかろうが、自転車道は自転車道だろう!」というさらなるツッコミが入ってきそうです。
しかし、自転車道なる用語は、道路交通法系列の法令だけでなく、道路法系列の法令においても用いられております。
いずれの法令においても、その意味は概ね同義ではありますものの、自転車に通行義務を課す効力があるのは、あくまで道路交通法上の自転車道に限られます。
そのため、自転車利用者にとっては、その自転車道が道路交通法上のものであるかどうかによって、天と地ほどの差が生じるのであります。


ここで、道路交通法系列の法令における自転車道と道路法系列の法令における自転車道の定義を読み比べてみますと・・・

--------------------
道路交通法系列(道路交通法)(再掲)
自転車の通行の用に供するため縁石線又はさくその他これに類する工作物によつて区画された車道の部分をいう。

道路法系列(道路構造令)
専ら自転車の通行の用に供するために、縁石線又はさくその他これに類する工作物により区画して設けられる道路の部分をいう。
--------------------

・・・道路法系列の自転車道は、道路交通法系列の自転車道とは異なり、「車道の部分」であることは求められておりません。
そのため、そこが自転車道であっても、それが明らかに「歩道の部分」であれば、道路法上の自転車道には該当するかもしれないけど、道路交通法上の自転車道には該当しない、ということになります。


では、冒頭の写真のように、そこに自転車道の道路標識があったらどうなのか。
道路標識は、「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」でその意味が定められておりますが、この命令は、道路交通法と道路法の両方の道路標識等を定めるものであり、また自転車道に関しては、次のように定められております。

--------------------
自転車専用(325の2)
自転車道であること。
--------------------

何と、どの法律で定められた自転車道であるかまでは定められておらず、「根拠法は何でもいいけど、とにかく自転車道だよ」という程度の意味しかありません。
すなわち、自転車道の道路標識があったからといって、それが道路交通法上の(=規制効力を有する)自転車道とは断言できないわけであります。


ではでは、冒頭の写真のような場所で、自転車道の道路標識を設置したのが公安委員会だったらどうなのか。
道路交通法に基づく規制を行う場合、その規制に係る道路標識は、原則として公安委員会が設置します。
しかし、公安委員会が設置したからといって、必ず道路交通法に基づく規制の効力が生じるというわけでもありません。
例えば、公安委員会が設置した道路標識が法に適っていない場合には、その道路標識には規制の効力は生じないこととなります。
冒頭で紹介しました2つの自転車道を例にすれば、いずれも道路交通法における自転車道の定義に適っているとは言い難く、そこに公安委員会が自転車道の道路標識を設置したからといって、道路交通法上の自転車道としての規制が確定的に生じるわけではない・・・という感じになりましょうか。

以上のことから、自転車道の道路標識が設置された自転車道であっても、「そこは(道路交通法上の)自転車道じゃないかもしれない」という疑念を持たずにはいられないわけなのでございます。



・・・と、長々と書いてまいりましたが、実のところ、車道を通行する自転車利用者の皆様は、自転車道が車道上に設けられているかとか歩道上に設けられているかとか、そんな七面倒くさいことを気にする必要は全くございません。
ごくごく単純に、道路交通法第1条[*2]に定められている「目的」に沿って、「安全かつ円滑に自転車道に進入できるかどうか」だけで判断すれば、それでOKであります。
万が一、その自転車道が道路交通法の規制にかかるものであったとしても、心配無用です。
その自転車道が、車道から安全かつ円滑に進入できるものでなければ、道路交通法第63条の3の「やむを得ない場合」に該当し、結局のところ通行義務が生じないからであります。

なお、(そんなことは起こらないと思いますが)もし自転車道を通行しなかったことを理由に公訴された場合には、次のような二段階の理論展開をして頂ければいいのかなと、そんなことをぼんやりと考えております。

1.当該自転車道は、車道に設けられたものとは言い難く、道路交通法上の自転車道には該当しない。ゆえに、当該自転車道を通行する義務は生じない。

2.仮に当該自転車道が道路交通法上の自転車道に該当するものであったとしても、道路の状況に鑑みれば、道路交通法第63条の3の「やむを得ない場合」に該当し、やはり当該自転車道を通行する義務は生じない。

・・・というか、まずは私が被告人になってみたいものです(笑)。



*1 ・・・という考察
当時の記事では、「車道の部分」という文言を半ばスルーしておりまして、ちょっとお恥ずかしい(汗)。

*2 道路交通法第1条
この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。

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コメント

まだ、根拠が全てあるわけでなく、単なる思いつきの部分がほとんどですから、公開の是非については内容の吟味をお願いします。


この自転車道と普通自転車の問題、法令の所管省庁の違いから来ているものではないかと思います。

所管省庁はそれぞれ、道路交通法は公安委員会、道路法は国土交通省です。

(建前上)道交法は交通弱者の安全優先で策定されているため、自転車も車両として原則車道にある事とし、
このため自転車道も車道上に設置されている事が前提となっている。
道路法は自動車の効率的運用優先で策定されているため、自動車の運用にとって邪魔な自転車は出来れば車道から追い出したく、自転車道の設置は歩道上も認める。
構造令との相違は、もとは建設省所管だったのが運輸省と合併したため、法改正で現状の様に車道に限定しなくなってしまったのだとしたら、うまく説明付くのですが・・・

ただ、地方の道路行政を担っている建設部局も国交省よりなので、
道路法優先で自転車道の整備を進めているのも、ある意味納得(?)出来るかと思います。

こうして考えると、「普通自転車」なる単語が道交法にのみ出てくるのも法案策定時に適切に擦り合わせしなかった、
あるいは、公安委員会の苦肉の策なのかな?と理解することが出来ます。
道交法は弱者保護のため、車両と位置づける自転車は車道に置きたいけど、
道路族の圧力もあり(?)自動車にっって邪魔な自転車を歩道上に上げざるを得ず、
かと言って、リヤカーを牽引しているような自転車もあるから、それの歩道走行を認めるわけにもいかず、
しょうが無し「普通自転車」だけは歩道走行を認めてしまった。

bec様

所管の違いによる弊害は、まさにそのとおりであると感じております。
道路法令と道路交通法令とで用語の意味が違ったり、道路利用者にかえって混乱をもたらす区画線が存在したりと、両法令の整合性が十分とは言えない状況に、何かと困惑を覚えるところでございます。

とりあえず、道路族側寄り?(かどうかは分かりませんが・・・)の自動車最優先の道路行政・交通行政が改められるようになれば、自転車利用者のみならず、多くの国民にとってより住みよい国になるような気がします。

歩道上の自転車道、起終点部分や交差点部分をどうか改良できないもんですかね…。
歩行者と交差する部分には横断歩道を引き、自転車道が自転車横断帯に接続する部分は段差を0にする。
自転車横断帯は直線的に。
あと一通にする。
出入口は車道と必ず接続。
歩道からのランプは一時停止。
それさえやってくれればいいですね。

また、歩道の自転車通行部分(偽物含む)は、路面を車道と同面まで下げて、幅が2m以上とれる場合は一通の自転車道に、車道の路肩と合わせて1.5m以上とれる場合は自転車レーンにできないのかとも思いますね。

このサイトはスポーツ自転車に有利になるよう法解釈する姿勢に偏りすぎだと思います。
この件などは抜け穴探しをしているようにしか思えません。(やむをえない場合など拡大解釈過ぎるでしょう)
このようなことでは他者から反発を受けるだけではないでしょうか。

「やむを得ない場合」の意味は、本屋で売ってる解説書に同じことが書かれてますよw

文句つける前にちゃんと勉強しておかないと、他者から反発を受けるだけでないでしょうか。

たびたびですが、自転車レーンに限らず、こういうどうしようもない工事がいたる所で行われていることに、よく疑問を感じています。
どなたかのようにお役所のやることを全て鵜呑みにするんじゃなく、こういう疑問の目を投げかけることも、大切だと思います。

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