[自転車横断帯No.00] 単なる横断なら自転車横断帯を通りましょう

前回の記事で「自転車横断帯は通らなくてもよい」みたいなことを言っておきながら、その舌の根も乾かぬうちに、「自転車横断帯を通れ」とは、一体何事だ!
・・・というお叱りを頂きそうなタイトルですが(汗)。

前回の記事で取り上げましたのは、交差点で交差道路を横断するときの話でございまして、今回書きますのは、交差点ではない所で道路を横断するときの話でございます。
例えば、道路の反対側にあるコンビニに入るために、今通ってる道路を横断する・・・みたいな場合ですね。


こんな感じを想定してます。

この場合に適用される道路交通法の条文は、前回ご紹介しました第63条の7ではなく、第63条の6になります。

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道路交通法第63条の6(自転車の横断の方法)
自転車は、道路を横断しようとするときは、自転車横断帯がある場所の付近においては、その自転車横断帯によつて道路を横断しなければならない。
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上の想定図でいいますと、本当はコンビニの真ん前で横断したいのだけれど、その「付近」に自転車横断帯があるので、自転車横断帯を通って横断しなければならないわけでございます。
ちなみに、ここでいう「付近」とは、裁判例等に照らせば[*1]、概ね30メートル以内ということになっておるようです。

自転車で30メートルというと、上り坂でもない限り、それこそ一漕ぎで到達できるような距離であります。
あまり説教めいたことを言うのは好きくないのですが、まぁ、面倒くさがらずに、自転車横断帯まで行きましょうね。

それに、自転車横断帯を通ると、それなりのメリットも自転車側にもたらされます。
そのメリットとは、自転車横断帯を通行する自転車は、道路を通っている他の車両よりも、通行の優先順位が高まるということであります。
車両は、自転車横断帯を通行している自転車があれば、その通行(横断)を妨害してはならないことになっており(道路交通法第38条)、極端なことを申しますと、自動車がすぐそこまで迫って来ている状況で横断を開始しても、故意に通行妨害を行おうとした場合など悪質なケースを除けば、少なくとも法律上は何ら問題のない行為[*2]であるのです。

また、自転車横断帯を横断中に、万一自動車との事故に遭ってしまったとしても、自転車側に課される過失割合は基本的に5〜10%程度[*3]。
法律上のリスクとして、実に20〜25%もの軽減が図れることとなるのです。

というわけで、正しいコンビニの入り方(というか自転車横断帯通行)の例でございます。



・・・ところで、ここで一つ気を付けてもらいたいことがございます。
それは、一見自転車横断帯のように見えて、実は自転車横断帯ではないというものが、世の中にございます。
しかも、その「エセ自転車横断帯」とでも表すべきものは、けっこうな割合で存在します。

その典型的な例が、これでございます。


(拙記事「アホな自転車横断帯が改善されたが・・・」から引用)

上の写真のエセ自転車横断帯は、法令[*4]が定めた自転車横断帯の様式にとはなっておりませんので、自転車横断帯としての効力を有しません。

(参考:法令上の自転車横断帯の様式)


ですので、30メートル以内にこのようなものがあっても、わざわざそこまで行く必要はありません。
さらに、万一このエセ自転車横断帯を通って横断中に、自動車との交通事故に遭ってしまうと、何しろそこは自転車横断帯ではありませんので、過失割合の軽減がなされない恐れすらございます。
いやはや、まったく良いこと無しでありますね。
こんな市民を惑わすものを設置しちゃう行政にも、困ったものでございます・・・。


なお、自転車横断帯は通らなくても良いなる記事、かなりの長丁場になりそうでございますので、関連記事には冒頭に[自転車横断帯No.##]と記すことにしました。
ただ、本記事は「通れ」という内容のものですので、番号は番外編的に「00」に致しました次第です。



*1 裁判例に照らせば
法律制定時の国会議事録によれば、警察庁は50メートル以内と考えていたようですが、裁判例では、40メートルでも「付近とは言えない」と判断されています。

*2 法律上は何ら問題のない行為
・・・とは言いつつも、事故になると何かと面倒な上、マナー的にもあれですので、自転車横断帯であっても、安全確認されることをお勧めします。

*3 基本的に0〜5%程度
民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準【254】

*4 法令
「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」のことをいいます。

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コメント

こんにちは, 本文の内容について質問があります.

本文の図にある自転車は車道を走っているようですが, 車道と歩道では話が違うような気がします.

"道路の反対側にあるコンビニに入る" とき,

1) もし自転車が歩道を走っているのならば, 道路の横断をする事になるのでしょうが,

2) 車道を走っているのならば, 道路外へ出るための右折をする事になるのではないでしょうか.

右折なら道路の横断ではないので, 横断帯を通らなくても良い, コンビニの真ん前で右折してもよい, と思います.

以上, 宜しくお願いします.

瀬山様
横断とは、道路を横切る行為のうち、交差点の通行などその他の行為に該当するものを除いたもの全般のことをいいます。
また右折とは、右に進行方向(車両の向き)を変えることをいいます。進行せずにその場で右に向きを変えることも含まれます(例:信号機により交通整理が行われている交差点における二段階右折)。
本件記事で取り上げているような道路の右外側に出る行為は、その動作を分ければ、「右折をし」→「横断をする」ということとなりますので、その横断行為に関し、道路交通法第63条の6が関係してくることとなります。
おそらく道路交通法第25条第2項に「右折」という言葉はでてくるが「横断」という言葉が出てこないことからそのようにお考えのことと推測しますが、第25条は車両の横断方法に関する条文であり、第2項は言い換えれば「右に向きを変えて道路を横断する場合」の方法を定めるものとなっております。
参考となれば幸いです。

お答え, どうも有難うございます. 大変勉強になりました.

1) 私は, 横断とは道路の端から端まで横切ることと考えていました. しかし, 道路の一部を横切ることも横断なのですね.

例えば, 第25条の2で禁じられている横断は, 道路の一部を横切ることも含まれている, ということでしょうか.

また, 十字路の直進が横断ではないのは, "第3節 横断等" とは別に "第6節 交差点における通行方法等" があるからなのですね.

2) 右折についても, 私は "右折を始めてから道路外へ出るまで", 交差点でなら, "交差点へ入って, 右折し, 交差点を出るまで" が右折だと考えていましたが, "止まっている場合も含めて, 進行方向が変わり終わるまで" ということでよろしいしょうか?

この部分は, まだ私ははっきりしておりません. 何かのヒントでも頂ければ幸いです.

瀬山様

横断につきましては・・・例えば自動車は、右折して道路外に出る際には、道路を半分だけ横切ることとなりますが、車両横断禁止の道路でこれを行えば、横断禁止(指定横断等禁止)違反に問われることとなります。
このことから、道路の一部分を横切る行為も、横断として扱われていることがお分かり頂けるかと思います。

右折につきましては・・・例えば、自転車は二段階右折ですが、信号のある交差点を二段階右折する途中、二段階目の待機場所において右を向く行為を、道路交通法施行令第2条では「その地点において右折すること」と表現しています。
このことから、その場であっても右に向きを変えれば「右折」となるものとご理解頂けるかと思います。

参考となれば幸いです。

お答え, よく分かりました.

右折については, 道路交通法施行令第2条の "青色の灯火の信号の意味 3" ですね.

感謝します. 本当にどうも有難うございました.

いつも記事を楽しみに拝見しております。

この記事について疑問があるのですが、例示のように車道外に出ることなく、車道の左端から反対車線の左端に移動するのは、横断ではなく転回ではないでしょうか。そうであるならば、特段自転車について転回に関する特例は規定されていないと存じますので、自転車横断帯を通行する必要はないと思いますがいかがでしょうか。

お天気や様
記事の例は、転回に際し明らかに道路の横断を行っているため、横断に関する規定の適用を受けることとなります。(なお、道路の一部しか横切らない場合も、基本的に横断として扱われます。)
自転車の転回全般についても、自転車は道路の左側端寄り又は第一通行帯を通行するため、その転回動作は横断行為を伴うものとなり、やはり横断に関する規定が適用されることとなります。

せがわ和尚さま

解答ありがとうございました。なるほど、道路の一部だけの場合も横断に該当するとは、知りませんでした。ただ、これは道路に対する進行方向を変える場合のみで、車道から路側帯に移ったりとか、通行帯内の横移動は、進行方向が変わらないので横断とはみなされないという理解でよろしいでしょうか。

あと、ここで尋ねるのはよろしくないかもしれませんが、右側だけに自転車横断帯がある交差点を直進または右折する場合、法第六十三条の七では左側通行を規定する第十七条第四項、二段階右折を規定する第三十四条の第3項にかかわらず、件の右側自転車横断帯を通行しなければならないのでしょうか。

お天気や様

道路交通法第63条の6は、車道から道路左側路側帯への進入、同一通行帯内における進路変更のいずれについても、適用されません。
そのため、自転車横断帯が付近にあっても、自転車横断帯以外の場所で左側路側帯に入ったり進路変更したりすることは問題ないこととなります。

交差点の右側(あるいは右外側)にのみ自転車横断帯がある場合については、その自転車横断帯を通る義務は生じません。

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